マザー・テレサ ─ カルカッタの「神の愛」87年

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マザー・テレサ ─ カルカッタの「神の愛」87年

インド・カルカッタの路上で、死を待つ人を抱き上げ続けた、北マケドニア出身の修道女。

1979 年ノーベル平和賞、2016 年ローマ教皇により聖人に列せられた、87 年の生涯を静かにたどります。


1. オスマン帝国領、アルバニア人の家に(1910〜)

1910 年 8 月 26 日、現北マケドニア・スコピエ(当時オスマン帝国領)。

本名 アグネス・ゴンジャ・ボヤジュ、アルバニア系カトリックの家庭。

父・ニコラは実業家・政治活動家、母・ドラナは敬虔なカトリック。

8 歳のとき、父が突然死亡。

政治闘争で毒殺された疑いがある、と本人は晩年回想しています。

経済的に困窮するも、母ドラナはアグネスたちに繰り返し言いました。

「私たちが食べる前に、まず貧しい人に分けなさい」

家にはいつも近所の貧者や孤児が招かれ、食卓を囲んでいたそうです。

これが彼女の「貧者と共に生きる」の原点でした。


2. 修道女として、インド・カルカッタへ(1928〜1948)

12 歳で「修道女になりたい」と決意。

18 歳、アイルランド・ロレト修道会に入り、修道名 「テレサ」 を授かる。

これは幼きイエスの聖テレサ(フランス)から取ったもの。

1929 年、インド・コルカタ(カルカッタ)のロレト修道会経営の女子高校に派遣。

ここで地理・宗教を教える教師として、18 年間を過ごします。

カトリックの女子高校はカルカッタの中流階級の少女が通う場所。

しかし校門の外には、別世界があった ── 路上で死んでいく貧者、飢えた孤児、ハンセン病患者。

教室の中の安全な世界と、門の外の地獄。

テレサは葛藤し続けました。


3. 「使命の中の使命」(1946)

1946 年 9 月 10 日。

保養のため山岳列車でダージリンへ向かう途中、テレサは「内なる声」を聞いた、と本人は語っています。

「修道院を出て、最も貧しい人々の中で生きなさい」

これを彼女は 「Call within the call(使命の中の使命)」 と呼びました。

ロレト修道会を出て、新しい修道会を作る決意。

しかし簡単ではない。

カトリック教会の許可が必要で、申請から認可まで 2 年かかりました。


4. 「神の愛の宣教者会」設立(1950)

1950 年 10 月 7 日、ローマ教皇から認可。

「Missionaries of Charity(神の愛の宣教者会)」設立。

青いライン入りの白いサリー(インドの最貧層が着る衣装)を制服に。

12 人の修道女と共に、カルカッタのスラム街に入っていきます。

最初の活動は路上で死ぬ人を看取る家「死を待つ人の家(Nirmal Hriday ニルマル・ヒルダイ ─ 清らかな心)」。

1952 年、ヒンドゥー寺院の一角を借りて開設。

ここで人は宗教を問わず、人として最後の数時間を尊厳を持って過ごすことができる。

ヒンドゥー教徒・イスラム教徒・キリスト教徒 ── 全員が分け隔てなく抱きしめられました。


5. ノーベル平和賞(1979)

活動は世界に広がります。

1965 年、ベネズエラ。1968 年、ローマ。

130 か国以上に「神の愛の宣教者会」の支部が設立されました。

1979 年、ノーベル平和賞受賞。

受賞演説で彼女が語ったのは、こんな言葉でした。

「世界平和のために何ができますか?─ それは、家に帰って、家族を愛することです」

賞金 19 万 2 千ドルは、すべて貧者のために使うと宣言。

受賞晩餐会の費用も全額難民のために使ってくれと要請しました。


6. 87 年の生涯(〜1997)

1997 年 9 月 5 日、カルカッタの修道院で永眠。87 歳。

死因は心不全。

葬儀はインド政府の国葬。

全インド全宗教から代表が参列、ロード・ローラーがマザーの棺を運びました。

カトリックの修道女が、ヒンドゥー教国家の国葬で送られた ── これは世界宗教史でも稀有な瞬間です。

そして 2003 年 10 月、ローマ教皇ヨハネ・パウロ 2 世によって福者列。

2016 年 9 月 4 日、ローマ教皇フランシスコによって聖人列。

「聖テレジア・オブ・カルカッタ」として、カトリック教会の正式な聖人になりました。


静かな余韻

「Not all of us can do great things. But we can do small things with great love.」

(皆が偉大なことを成せるわけではない。だが小さなことを大きな愛で成すことはできる)

カルカッタの路上で、死を待つ人を抱きしめることを 47 年続けた女性。

その仕事は、ノーベル賞を取らなくても、聖人にならなくても、1 人の人を抱きしめるだけで完結する仕事だった。

「家に帰って、家族を愛しなさい」── ノーベル賞演説の言葉も同じです。

平和は、遠くのどこかにあるものではなく、自分の身近な誰かから始まる。

身長 152 cm の小柄な女性が、世界 130 か国に支部を持つ修道会を作った。

「小さなことを大きな愛で」── 21 世紀の私たちがSNS で大きな成果ばかりを追い求めるとき、この一文は静かに反省を促してくれます。


💬 本日のひとこと

> Not all of us can do great things. But we can do small things with great love.

「大きなこと」を諦めても、「小さなこと」を大きな愛で続けることはできる。

家族への一言、隣人への気遣い、見ず知らずの人への小さな親切。

マザーの 87 年は、それを毎日選び続けることで作られたのです。


もう少し深く知りたい人へ

調べたら面白かったので、書いておきますね。

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