「不味い」と言わずに不味いを伝える、私たちが密かに使ってきた言葉たち

5つの言い換えを並べたアイキャッチ日常の疑問

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「不味い」と言わずに不味いを伝える、私たちが密かに使ってきた言葉たち

先日、ネットの匿名投稿で「三大『あんまり美味くねえな』の言い換え」というお題が大喜利化していました。

並んだコメントを眺めて、思ったんです。私たちは本当に「不味い」と言わない。

考えてみると、人にもらった料理、外食、家族が作ったご飯。「あ、これちょっと違うな」と思った瞬間、私たちは無意識に違う言葉を探します。

その「探した結果の言葉」を、5つだけ並べてみます。

微妙

たぶん最強の言い換え。

「どうだった?」と聞かれて「微妙」と答えれば、評価を出したことにはなる。でも何が微妙なのかは言ってない。相手は「ふーん」と察してくれる。

「悪い」と言ってないのに、ちゃんと「悪い」が伝わる。曖昧さの効率がいちばん高い言葉です。

悪くない

似ているようで、ベクトルが違います。

「美味しい」とは言いたくない。でも完全否定もしたくない。そんなときに「悪くない」。

肯定していないのに、肯定っぽく聞こえる。本人の中では70点未満なんだけど、聞いた側は「まあ食べられるんだな」と受け取る。一種の翻訳ロスを利用した言葉です。

個性的

これは少し残酷な言い回しかもしれません。

味の方向性が独特すぎて、好みが分かれる、と言いたい。でも「変」とは言えない。だから「個性的」と言って、評価そのものを棚に上げる。

外食レビューに頻出する単語です。「個性的なお店です」と書かれていたら、行く前にもう一度よく考えたほうがいいかもしれません。

素朴な味

家庭料理を褒めるとき、ほめ言葉として使われることもあります。でも、文脈次第では「工夫がない」「商業基準に届いていない」というメッセージに化けます。

「シンプル」「飾らない」「家庭的」も同じ系統。直接「もっと工夫してほしい」とは言わない。代わりに、原料そのものを褒めて、料理人の領域には触れない、という芸の細かい言い回しです。

口に合わない

最後はこれ。

ポイントは、味そのものではなく「自分の口」を主語にすること。「これが不味い」ではなく「私が合わなかった」。料理側の問題を、自分側の問題に書き換える。

責任の所在をこっそり移すこの一手は、丁寧でありながら、たぶんいちばんはっきり「合わなかった」が伝わる強さがあります。

海外でも、似たような言葉はある

アメリカ英語で「Different」、フランス語で「Original」。料理を出した相手の前で、はっきり「Bad」と言わずに、それでも「これは違う」と伝えるための語が用意されています。

ただ、日本語のようにバリエーションが多いかというと、そこまでではないようです。「微妙」「悪くない」「個性的」「素朴な味」「口に合わない」「実に複雑な味わい」と、すぐに6つ7つ出てくる文化は、なかなか珍しいのかもしれません。

言葉が増える方向

否定したいけど、相手を傷つけたくない。

たぶんその気持ちが、この言葉たちを少しずつ生んできたんだと思います。直接言わずに済ませるための語彙が、これだけ豊富にあるという事実。それ自体が、ちょっと面白い文化資産のようにも見えます。

次に料理を出されて「あ、ちょっと違うな」と思ったとき。

自分が無意識にどの言葉を選んだか、観察してみると面白いかもしれません。

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