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柏餅の葉っぱ、なぜ食べないと教わるのか。たどっていくと「家系」の話になった
5月が近づくと、和菓子屋の店先に柏餅が並びはじめます。
私の家でも、こどもの日が近くなると母が買ってきました。包んでいる葉っぱをはがしながら、毎年のように同じ会話をしていた気がします。「これ食べていいんだっけ」「食べないって決まってるよ」。
たぶん、多くの家で似たやりとりがあるはずです。
ある調査会社が1,000人に聞いたところ、柏餅の葉っぱを食べないと答えた人は91%。ほぼ全員が「食べない派」でした。
ではなぜ食べないのか。そして、そもそもなぜ巻いてあるのか。気になって調べてみたら、思ったより深いところまでたどり着きました。
食べない理由は、わりとシンプルだった
まず「食べない」の理由から。
柏の葉は厚みがあって、繊維も多く、噛み切りにくい。苦みもある。さらに桜餅の葉と違って、塩漬けにもされていません。
つまり、食べてもおいしくない。それだけのことらしいんです。
桜餅の葉は塩漬けの工程を経て柔らかくなり、塩味が餅と合うように調整されています。一方、柏餅の葉はあくまで「包むためのもの」として使われている。役割がはじめから違うわけです。
「食べる前提でつくられていない葉っぱ」。これが食べない側のシンプルな結論でした。
では、なぜ巻いてあるのか
ここからが本題です。
柏の木には、ちょっと変わった性質があります。冬になっても葉が落ちない。新芽が出るまで、古い葉がしぶとく枝についたままなんです。
普通の落葉樹は秋に葉を落として、春に新しい葉を出します。でも柏は順番が逆。「次の世代がきちんと出てきたのを見届けてから、古い葉が落ちる」ような木なんです。
この姿が、昔の人にはこう見えました。
跡継ぎが生まれるまで、親の代は絶えない。
子孫繁栄の縁起もの。家系が途切れないようにという願い。江戸時代の武家社会では、跡取りの誕生は家の存続そのものでした。だから5月の節句、子どもの成長を祝う日に、柏の葉で包んだ餅を食べるようになったといわれています。
「食べちゃダメ」と教えられてきたあの葉っぱは、もともと食べるためのものではなく、家を絶やさないための祈りを包む紙のような役割だった、ということになります。
おまけの実用性もあった
縁起だけでなく、実用面の役割もあります。
柏の葉に含まれる「オイゲノール」という香り成分には、抗菌作用と防腐効果があるそうです。冷蔵庫がなかった時代、餅を少しでも長く持たせたい。そんな知恵として、抗菌力のある葉で包む選択は理にかなっていた。
縁起と保存。ふたつの理由が、ぴったり重なった葉っぱだった、という言い方もできるかもしれません。
91%が食べないあの葉っぱは
まとめるとこうなります。
食べない理由は、ただ「おいしくないから」。
巻いてある理由は、「家を絶やさない」という縁起担ぎと、抗菌のための知恵。
葉そのものの存在意義としては、食べないのが正解です。あれは食べ物ではなく、願いと工夫を包む装置のほうに近い。
来週、柏餅を買って葉をはがすとき、少しだけそのことを思い出すかもしれません。「食べちゃダメ」と昔の人が言い続けてきたのは、きっと味の問題だけじゃなかったんだな、と。



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